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September 27, 2022

これからの宇宙事業を担う「エンジニアの後進育成」という挑戦

本多 哲也

(シニアエンジニア)
Tetsuya Honda Senior Engineer

航空宇宙業界を代表する大手重工メーカーにて、ISS(国際宇宙ステーション)の日本実験棟「きぼう」船外実験プラットフォームの開発に、初期段階から約25年に渡って従事。その後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)にて、中型実験装置アダプタ「i-SEEP」を初めとする船外の実験装置開発の取り纏め業務を実施するなど、宇宙開発の第一線に携わってきた。

なぜ、宇宙産業・Space BD?

宇宙人生、第二の挑戦!
メーカーとは違った切り口で、宇宙を見てみたくなった。

ISSの日本実験棟「きぼう」船外実験プラットフォームの開発に、25年という自分の仕事人生の半分ほどの時間をかけて取り組んできて、開発プロジェクトが終わったときに大きな達成感を味わうことができました。でもそれと同時に、1つ仕事をやりきった節目になったので、何かまた次の挑戦がしたいなと思っていたんです。Space BDのことは、JAXAで「きぼう」の船外利用の取り纏め業務をしていたときに、Space BDが民間の船外利用事業者として選定されたことで初めて名前を知りました。

最初はスタートアップ企業の1つとして認識していただけでしたが、私が当時担当していた「i-SEEP」などの実験装置で一番つながりができていた会社で、宇宙業界にいた知人たちもSpace BDに参画していると知るうちに、少しずつ気になる存在になっていたんです。Space BDは宇宙事業を進めていく上で、これからもっとエンジニアの層を厚くしていく必要がある、と。そこに対して私にできることがしたい、これが次の挑戦だと思いました。ずっとメーカーで開発をしてきたので、またちょっと違った切り口から宇宙を見てみたいという気持ちにも合致して。Space BDでの仕事は、長く宇宙関係の仕事をしてきた私にとっても、新しい発見や学びがあり、日々新鮮な目で業務に取り組むことができています。忙しくしている毎日ですが、やりがいがあるので楽しさのほうが大きいですね。


現在の仕事内容

Space BDの業務を通じて、
これからの宇宙事業を担っていけるエンジニアを育てたい。

現在の私の主な仕事の1つめは、ISSの「きぼう」船外実験プラットフォーム「i-SEEP」を利用するサービスでの実験装置のサポート業務です。2つめは、総務省が推進している月の水資源探査の一環で、Space BDが参画している「TSUKIMI」という産官学連携のプロジェクトがあるのですが、Space BDとしてどのようなメンバーでどのように取り組んでいくかを計画するところから、5年をかけてのミッションの遂行に携わっています。その他、これまでの宇宙業界での経験を活かしながら、いろいろな新規案件を幅広くサポートしているという感じです。Space BDが宇宙事業を拡大していくためにも、エンジニアの力はもっともっと必要になっていくので、日々の業務を通じて、若いメンバーを、これからの宇宙事業を担えるような人材に育てたいと考えています。

Space BDには宇宙業界出身のエンジニアと、まったく違うフィールド出身のエンジニアがどちらもいるので、切り口も、見方もそれぞれ違います。でも、それゆえの相乗効果があり、非常に大きな強みになっていると感じます。今の時代、高い専門性を持ってモノづくりができるエンジニアだけでなく、全体を俯瞰してインテグレーションができるようなエンジニアも強く求められてきていますが、業務領域の幅広さやスピード感のあるSpace BDでは、積極的に仕事に取り組んでいくことで、そういったスキルをたくさん積んでいくことができると思います。私もこれまでの経験をシェアしたり、持っている技術や知識を伝承したりしながら、多様なエンジニアの育成につながるサポートができるような業務を広げていきたいと思っています。

宇宙の未来について

「スピンオフ」の増加によって、
宇宙開発での技術が、もっと日常生活を豊かにしていく。

飛行機について考えてもそうですが、昔は世界を飛び回るにはものすごく時間がかかっていました。でも今は、技術やサービスも進化して簡単に遠くまで移動できるようになり、人々の生活に大きな変化をもたらしています。宇宙についても、10年以上前の状況とは明らかに違うし、近年かなり身近になってきたところもありますが、それでもまだ飛行機ほどではない。だけど実は、あまり知られていないところで、すでに宇宙が日常で役立っていたりもします。宇宙の技術で開発されたものが、今地上で使われているというケースは結構あって、これを宇宙業界では「スピンオフ」と呼んでいます。例えば、オムツのような水を吸収できる製品もそう。宇宙を目指すことで、技術が進んで新たな製品が生まれ、地球上のあらゆるところで生活の中にまで浸透していくようなことは、今後もどんどん起きてくるのかなと思います。


私の目標・チャレンジ

若いエンジニアの成功体験と自己実現を、
全力でサポートしていきたい。

TSUKIMI」のプロジェクトは、Space BDとしても1つのチャンスをもらっている案件だと思っています。月の水資源を探査するという今後の宇宙開発に大きな影響を与えるプロジェクトに関わることが決まったときは、感動というよりも、責任感のほうが強かったですね。Space BDのエンジニアを含めプロジェクトメンバー全員で、どういう形でこのプロジェクトに取り組むのかというところからスタートして1年ほどが経ち、今はだいぶ軌道に乗ってきたかなという段階です。本プロジェクトはあと3年半ほど続きますが、日本の国際競争力の強化を目指した技術開発の中で「衛星を1つの形にする」というミッションがあるので、そうした仕事を成し遂げる過程で、若いエンジニアの方たちには自己実現の機会にしていただきたいと思っています。

私も過去の人生の中で、やはり節目節目に達成感を得ることによって仕事へのモチベーションがまた新たに持てたという経験をしてきましたので、今Space BDにいるメンバーやこれから入社される方には、ぜひそういった成功体験をいくつでもしていただきたいと思っています。それをいろいろな業務を通じてサポートしていくのが、今の私のチャレンジです。

私にとって
「宇宙」とは
?

「今のキャリアにつながる、私の原点」

私の世代的に言うと、一番カルチャーショックを受けたのは、宇宙船「アポロ11号」が月に着陸したのを子どものときに見たこと。ここから、私の宇宙への憧れが始まりました。最初は「天体」に興味を持ち、だんだんと「宇宙のエンジニア」を目指すように変わっていきましたが、子どものときに芽生えた宇宙への憧れが、今のキャリアにつながっているんです。

地球以外の知らない世界があると知り、できれば自分で宇宙に行って、自分の目で宇宙から地球を見てみたいという夢があったのですが、残念ながら宇宙飛行士にはなっていません。でも、宇宙が好きだという気持ちを持ち続けた結果、エンジニアとして宇宙開発に関わる仕事をして、今はまたSpace BDで新たな切り口から宇宙の仕事をしています。私にとって宇宙は、憧れであり、私自身の原点をつくっているものだと言えますね。

メッセージ

問題意識を持って、先へ先へと自分で動けるようなモチベーションを持った方にぜひ来ていただきたいですね。年齢問わず。エンジニアリングをしていく中ではいろいろと課題も出てくるので、その辺の課題を認識して、先見力で手を打てるような力は必要不可欠。そして、もう1つ言うと、仕事を楽しむことも大事です。これから紆余曲折あると思いますが、気持ちが沈んでしまうと仕事も上手く回りません。でも、最終的にはどうにかなると思っていますし、私自身もどうにかなってきました。「宇宙」というキーワードでいろいろな切り口があっていいと思うし、夢のある業界だと思うので、楽しむ気持ちを持って、積極的に仕事をしていこうというチャレンジングな方に、ぜひ来ていただければ嬉しいです。

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